沢の名前は数知れずあれど、「恋ノ岐川」ほど耳に残る名前も少ないだろう。私のまわりには、どんな沢だか知らないが、名前に惹かれて登ってみたいという人もいるくらいだ。その平ヶ岳に源を発する沢に登ってみた。


橋の脇から沢に下りると、そこは沢というより川だった。穏やかな流れの川に沿って、ゴーロの河原をときには膝まで水に浸かりながら、ひたすら歩く。完全な曇り空だが水が冷たくないのが救いだ。

10月の沢に花なんて咲いていないかと思っていたが、岩の割れ目に根を張った大文字草がちょうど盛りだった。蝶まで飛んでいた。


ときどき小さな滝や、ゴルジュっぽいところはあるものの、基本的にゴーロ歩きが続く。両側の岩が立っていても、すぐその上は台地になっていて、開放感がある明るい沢だ。

滝は水量が多いが、ホールドが豊富でホイホイと登ってしまう。

釜が多く、それも深い。水に入りたくないので一つ一つへつってかわす。それにしてもこの水の色はまるでバスクリン。

清水谷出合をすぎると雰囲気が変わる。ゴーロが終わり広い滑床になる。両岸は低く、明るい広葉樹の原生林が広がる。テントを張れる場所もたくさんありそうだ。

ナメは続く。レースのカーテンのように水が流れる。私のステルスの靴が岩に吸い付くように決まる。気持がいい。


またまたゴーロが続く。それも場所によっては、「エイショ、コラショ」と言って乗り越える大きいゴーロでうんざりする。ただただ単調で標高1000mから先はとても長く感じる。そうこうしていると、沢屋に追いつかれた不幸な第1釣り人発見。40cmはある岩魚を1匹持っていた。魚影がないのはこの釣り人のせいかと思ったが、この人も今日はなかなか釣れずこの1匹のみとのこと。今日は魚が動かない日らしい。

いくつも小さな滝はあるが、特に緊張することもなくヒョイと越える。まわりの木が紅葉し始めているのがうれしい。

上流から流れてきた秋のしるし。

今日のサイト場のホオコ沢出合は近い。でもどんどん雲が下がってきて、稜線は完全に灰色の雲の中。おかしい、明日は晴れるはずなのに...。とにかく急ごう。


焚き火を抜きにして沢の一夜は明かせない。が、大きな薪が全くなく、細かい流木も濡れていて、なかなか本調子に火がつかない。いい加減あきらめかけた頃、やっと炎が大きく上がった。良かった...これでパンツを乾かせる...。ウインナーも焚き火であぶって食べるとめちゃめちゃうまい。
宴もたけなわな頃、ついにポツリポツリと降ってきた。強制散会。明日の水量がちょっと心配だ。
(次回に続く)
初秋の沢は、緑と紅葉の静かなコントラストが良いですね◎
岩と砂利は大変そうですが、水音を聴きながら行くのは気持ちがいいでしょうね
オホコ。どんな意味なんだろう?
沢の水の色は本当に不思議です。
ここは緑だったのですが、青い沢もあります。
例えばここ、
http://geotrek.seesaa.net/article/53079444.html
秋の沢は紅葉がきれいなので好きです。でもいつもかなり寒い思いをします...
すごい青!
すっごい綺麗!あんなかっこいい場所があるんですね
わー、感動した!