2008年05月03日

そして頂へ〜ネパール・Island Peak(15)

15日目 C1〜アイランド・ピーク山頂(6185m)〜C1〜BC (→map)

080503C1出発 2時に起きた。思いのほかよく眠れた。ちょっと頭が重いが高度順化はうまくいったようだ。安心した。しかし、お腹には相変らず悪魔が住んでいる。えらい不安だ。昨晩、下痢止めを飲み、今朝また最終兵器の強力下痢止めを飲んでとりあえず小康状態を保っている。
インスタントラーメンで腹ごしらえをし身支度を整え、午前3時、暗闇の中、我々はIsland Peakの山頂を目指してアタックを開始した。

080503夜明け前 夜が明けるまではヘッドランプの明かりをたよりにひたすら登る。いつもながらアタックの日の出前は高所登山で一番つらい。行動時間の制約でペースは速い、自分がどんなところを歩いているかよく分からない、どんどん寒くなってゆく。そして胸がつぶされるように呼吸が苦しい。
ずっと急な岩の斜面を登ってゆく。ときには短いが3級程度の岩場もある。切れている場所もあるようだが暗くて分からない。先行者のヘッドランプの明かりは、見上げるような場所に列をなして見える。

080503懸垂氷河

尾根が細くなり視界が開ける。前方に頂上直下から流れ出る、巨大な滝のような懸垂氷河が現れた。

080503岩のリッジ

空が白んでくるころ、岩尾根を登りきって細い岩のリッジにでる。ここは両側がすっぱりと切れ落ちているので、アンザイレンして渡ってゆく。
渡りきった先で懸垂氷河の末端に出て、いよいよアイゼンを履きピッケルを持って雪山が始まる。

080503夜明け

アンザイレンしたまま懸垂氷河の急斜面を登っていく。メンバーは疲労の色が濃く引っ張られるように歩いているが、シェルパは急かすことなく我々のペースに合わせてくれる。ここはいくつものクレバスが大きな口をあけている。彼は一つ一つ迂回して我々を安全なコースに導いてくれる。
気温はさほど低くはないが、血行が悪く指先が冷たい。指を握って温めたりマッサージをする。ふと振り返るとAma Dablamの山頂が朝日に輝いていた。

080503休憩 主稜線への氷壁の手前の氷河の傾斜が緩んだところで、腰を落ち着けて休憩する。凍らないようにジャケットのポケットに入れておいたバーム入りの水を飲み、行動食の黒砂糖をかじる。日も当たってきて暖かくなってきた。指先の冷たいのもすっかり直り、がぜん元気が出てきた。

080503アイランドピーク氷壁

主稜線直下の氷壁は3P、傾斜は60度以上ありそうだ。氷はペニテント状(上に向かって発達している氷、ゴジラの背中のような氷が林立する)に発達している。既にフィックスロープが張られているので、これにユマールをセットして登ってゆく。それにしても先行隊はえらい苦労しているようだ。大丈夫か?

080503Sさん 取り付いてみると、腰から胸くらいの段差の氷の階段を登ってゆく感じだ。場所によっては青氷になっていてアイゼンが刺さらないが、氷の表面はぼこぼこしているので、フロントポイントやピックを引っ掛ける場所はある。一通りのアイゼン、ピッケルワークができれば、フィックスロープもあるので問題なく登れる。なんかだんだん楽しくなってきた。
見上げると、アイスもやっているSさんが危なげなく登ってゆくのが見える。もう少しで稜線にたどり着きそうだ。

080503Wさん 下を見るとアイゼンに不慣れなWさんが難儀していた...
それにしてもだいぶ登ってきたな。なぜか登れば登るほど呼吸も楽になってきていつもの調子がでてきた。

080503アイランドピーク直下の雪稜

氷壁を登りきると、真っ直ぐに細い雪稜が続いていた。ついさっきまで晴れていたのに、もうガスに覆われて景色は見えない。しかし、その雪稜の頂点に目指すIsland Peakの頂上が見えている。もう一歩一歩真っ直ぐ進むだけだ。フィックスロープにカラビナをかける。アイゼンが雪面に刺さり、サクッ、サクッと心地よい音をたてる。時々うつむいて立ち止まるSさんを励ましながら、憧れの頂に向かって歩いてゆく。

080503頂上 午前10時、Island Peak登頂。頂上は立っていると危ないくらい狭く、傾斜がある。フィックスロープを固定するスノーバーにセルフビレイをとり腰を下ろす。C1から5人全員登頂。それで頂上は満席だ。落ち着いてあたりを見回す。ガスのため視界はほとんどないが、ガスの切れ間からローツェ南壁が見えた。とうとう登った。感激ではなく静かにそう思った。
次から次へと登山者が登ってくる。狭いピークではのんびりすることもできず、さっさと下山を開始する。

細い雪稜を蟻の行列のように登ってくる登山者とすれ違いながら下山するために、下山は登り以上の時間がかかる。天気は急速に悪化したたきつけるような吹雪になった。
氷壁の下りはフィックスロープを懸垂下降する。支点が不安だが大丈夫だと言うのでしかたがないからやる。私は下降器を持ってないので、管つきビナにハーフマストを作って下りる。標高6000mで簡単ながらもちゃんとロープワークができる自分に感動する。が、フィックスロープは半径が3倍くらいになるほど毛羽立っている上、自重で強力なテンションがかかっている。おまけにハーフマストは滑りがめちゃめちゃ悪い。なんとか一定の制動をかけようとするが、ガクン、ガクンと滑ったり止まったり。そのたびにハーネスで腹が締め付けられて衝撃が走る。そして、ついに悪魔が目覚めた...下痢止めが切れたのか、腹が急にギュルギュルいいだした。衝撃が来るたびにもれそうになる。ううぅぅ。なんとか降りられたが、息も絶え絶え、言葉も発することができない。

080503下山 アンザイレンして氷河を下る。腹が苦しい。前のめりになってこらえながらただ歩く。ううぅぅ。岩のリッジでサポートシェルパがお茶とお弁当を持ってきて待っていてくれたが手をつけることもできない。吹雪に打たれうずくまって休憩する。頭や背中に雪が積もってゆく...このあたりは傾斜が急なので天然トイレもできない。さらに下山路は雪が積もり岩場が滑る。そのたびにお腹に緊張が走る。
この苦しみから解放されたのはC1に到着してからだった。C1で少し休み、そのままBCまで一気に下った。BCではメンバーとそしてガイドさん、サポートしてくれた、いや、登らせてくれたシェルパたちと握手をして登頂を祝った。





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posted by 惰性人 at 00:00 | コメント(2) | トラックバック(0) | 山登り〜海外
この記事へのコメント
すごくリアルで楽しいです。登頂日の貴重なシーンを見せて頂き感謝です!!貴殿からチンボラソの懸垂氷河の昇り方や、いろいろロープワークを教えてもらったおかげで私も登頂できました。アリガトウ!!
Posted by 高木 at 2008年06月03日 12:36
いつも見ていただいてありがとうございます。
これは私の記録であるとともにメンバー全員の記録です。
それにしても書いていて思い出してお腹が痛くなりそうになりました...
Posted by 惰性人 at 2008年06月05日 00:01
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