2011年09月26日

雪の早月尾根〜剱岳(1)

9/23 富山駅〜上市駅〜馬場島〜早月小屋

また、つるぎかよ!!と言われそうだが、先月に続き剱岳に行った。前回行けなかった北方稜線のリベンジだ。


110923早月尾根登山口馬場島 富山駅で夜行バスを下り、富山地方鉄道で上市駅まで行って、そこからタクシーに乗ってやっとこさ、早月尾根登山口の馬場島に至る。
早月尾根は「北の早月、南の黒戸」と言ってもいい、標高差のある長い尾根だ。昨晩降っていた激しい雨は止み、どんよりと曇っていても、暑くもなく寒くもなくちょうどいい感じだ。

110923早月尾根を登る

微妙に秋色の森の中の、緩急のある道をひたすら登って行く。途中、下山してくる多くの人とすれ違う。なんでも、早月小屋から上は凍結しているので、小屋の主人に剱岳登頂を止めるように言われたそうだ。むむ、昨日の雨はここでは雪だったか。明日は大丈夫だろうか...


110923早月尾根1600m 200mごとに立派なプレートが設置されている。しかし、ここに書かれている標高は誤差が±50mくらいある...

110923雨に濡れる赤い実

どんよりとした曇りは、突然大粒の激しい雨に変わった。急いで雨具を着るが、着ているあいだにもどんどんズボンが濡れてゆく。寒いよ〜。先週の鷹ノ巣谷と同じカッコだし。

雨に濡れた木の実はルビーのように輝いていた。


110923雪の早月尾根

激しい雨はみぞれに変わり、そして標高2000mを越えると雪になった。風に舞う大きな薄片。久しぶりに見る景色だ。寒い...なんだか侘しい...。明日は大丈夫だろうか...不安はますます大きくなる。


110923早月小屋

3時近くなり、早月小屋に到着。小屋は雪雲に包まれている。飛び込むように小屋に入り、雨具を脱ぐ。ああ、小屋ってなんて暖かいんだろう。テントだったら今ごろ寒い寒い言いながら、必死でポールを差し込んでいたりするに違いない。

荷物を部屋の前に置き、すぐさま宴会開始。小屋ってなんて贅沢なんだろう。


110923早月小屋の夕食 宴もたけなわな頃、夕食に呼ばれる。飲んでいても勝手に夕食ができる。小屋ってすばらしい...高いけど。
今日は混んでいると聞いていたけれど、雪で下山してしまったのか、部屋には余裕があってゆったり眠れた。山で布団で眠れるなんて...。しかし、ただただ、雪がサラサラと小屋を打つ音が気になる。果たして明日は剱岳に登れるのか?

次回に続く)





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2011年10月04日

雪を踏んで山頂へ〜剱岳(2)

9/24 早月小屋〜剱岳〜剣御前小舎

前回の続き)

110924早月小屋での朝 昨晩は相当冷えたらしい...布団でぬくぬく寝ていたので分からなかったが。しかし、外に出れば空気はキンキンに冷え、手袋をしないとたちまち手がかじかむほど寒い。
とびきりの快晴、登山日和、さっそく剱岳山頂に向けて出発しよう!だがしかし、小屋の主人に、登山道は凍結していて危険だから山頂には行くな、と止められた。

110924早月小屋のシダに積もる雪

昨晩の雪がうっすらと積もっている。


110924早付き尾根から朝の猫又山

小屋の主人の言うことを聞いて、まずは2614mのピョコまで空身で偵察に行く。左手に深い谷を挟んで朝日に照らされた大きな山が見える。猫又山だ。いずれは北方稜線をたどってあそこまで行きたいものだ。


110924早月尾根のこけもも

登山道の脇にはこけももの木があった。目につきやすいせいか、あまり実がついていない。真っ赤に熟した実を見つけ、口に放り込む。すっぱ!早月尾根はこけもものほかにも、くろまめの木の実(ブルーベリー)やキイチゴがあちこちになっている。デザート代わりにプチプチとつまみながら歩く。


110924早月尾根から猫又山

日が昇るにつれ、どんどん暖かくなってきた。直接当たる日差しは暑いくらいだ。これだったら雪も融けるだろうと判断して、いったん小屋に戻り荷物を背負って剱岳山頂を目指す。もう10時を過ぎてしまった、今日は北方稜線は難しいな...。

高くなった太陽の下、猫又山は今朝とは表情を一変させている。


110924早月尾根2614mから剱岳

2614mのピョコまでは比較的緩やかな登り。しかし、その後は山頂に向かって岩の急登が続く。


110924早月尾根から大日岳

汗をかきながら登ってゆく。日差しは強く、風はなく、今朝の寒さがうそのように暑い。稜線の岩峰の合間から雲海の上に大日岳が見えた。


110924早月尾根2800m

突然目の前が開け、すぐ近くに剱岳の山頂があった。すぐ近くと言っても30分はかかるだろう。ここから、切り立った岩尾根に鎖場が連続し、剱岳の本領発揮となる。


110924早月尾根鎖場

鎖場はほぼ尾根の北側にあって日が当たらない。昨晩降った雪が岩のすき間を埋め、表面をコーティングし、ツルツル滑るところがある。鎖をしっかり握って慎重に通過する。しかし、氷点下の鎖は手が切れるように冷たい。鎖を握らないとおっかないし、握れば冷たくて手が痛いし...


110924早月尾根別山尾根合流点

別山尾根からの登山道との合流点にでた。ここまではほとんど人のいない静かな山だったが、ここからは人がウジャウジャいて、前からも後からも人の声が聞こえて賑やかだ。


110924剱岳山頂直下

頂上はもうすぐそこだ!


次回に続く)



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2011年10月05日

剱岳山頂そして夕日〜剱岳(3)

9/24 早月小屋〜剱岳〜剣御前小舎

前回の続き)

110924剱岳山頂

剱岳山頂到着。先月来たときには雨が降っていて視界がなく、人もいなかった。しかし今日は大入りの国技館のように、頂上に大勢の人がみっしり並んで座っている。私が座る場所もない。後立山から立山、槍穂、黒部源流地帯に至る北アの山々の眺めはすばらしいが、あまりにも人が多くてパノラマ写真を撮る気になれない。とりあえず祠の写真を撮る。


ゆっくり登ってきたので時はすでに1時をまわっている。これから北方稜線は厳しいので、別山尾根から剣御前小舎まで下ることにする。


110924剱岳カニの横ばいの渋滞

むむ、これが噂に聞く、カニの横ばいの渋滞か。岩溝に挟まって20分ほど順番を待つ。天気が良く景色もすばらしいので、待つのも苦にならない。


110924剱岳カニの横ばい

カニの横ばい。高度感のある垂直に切り立った岩を鎖でトラバースする。前回は私のフラットソールになりかけた靴が、雨でツルツル滑ってかなり力技で下りた。今日は岩が乾いていて何の問題もない。


110924剱岳平蔵の頭

行く手には恐竜の背中のような平蔵の頭が立ちはだかる。ここから見るとかなり恐ろしい所を登るように見えるが、近づけばたいしたことはない。


110924剱岳鎖場

はしごや鎖が続く。良く整備されているので問題なく下る。


110924前剱岳から剱岳

前剱岳から剱岳を振り返る。ここまで来れば後はたいした鎖場もなく、のんびり山歩きになる。


110924剱沢

剱沢がどんどん近づいてくる。しかし今日は剱沢には下りず、くろゆりのコルを経由して剣御前をトラバースして剣御前小舎に至る道を行く。


110924夕日に映える剱岳

うんざりするほど平坦で長いトラバース道を歩く。日が暮れてきて寒い。剣も赤く染まっている。なんだかわびしい。

とぼとぼと歩いていると、仲間が突然、バタバタと飛んできた雷鳥に襲われる。雷鳥が飛ぶのをはじめて見たが、雷鳥に襲われる人もはじめて見た。


110924剱岳ちんぐるま

あたりに花はなく。ただただチングルマ。もの寂しい。


110924剣御前小舎 寒くて走り出したくなった頃、やっと剣御前小舎が見えてきた。小屋の屋根が夕日に染まっている。もしかしてもう日が沈むのか?沈む夕日を見るために、小屋に向かってあわてて走り出す。

110924剣御前小舎からの夕日

日没になんとか間にあった。オレンジ色の夕日が山を、雲を、そして自分もすべてオレンジ色に染めてゆく。久しぶりに見た美しい夕日。


110924剣御前小舎の食事 すっかり体が冷え、我慢できなくなって小屋に入る。すぐに夕食にありついた。うまい!特に野菜のたくさん入った具だくさん味噌汁がうまい!一気飲みしておかわりをする。

次回に続く)



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2011年10月07日

長〜い、内蔵助谷〜剱岳(4)

9/25 剣御前小舎〜内蔵助山荘〜内蔵助平〜黒部ダム〜扇沢

前回の続き)

110925夜明けの剣御前小舎

夜明け。まだ日が明けやらぬうちに小屋を発つ。今日は下山だ。室堂に下りればすぐだが、アルペンルートは交通費が高い。そこで黒部ダムへ下山。足で稼ぐことにした。

秋の3000級の稜線は寒い。手袋、帽子と完全装備で出発。


110925別山からの朝日

小屋から真砂岳への縦走路は、稜線沿いに別山に登る道と、山頂を巻く道がある。日の出が見たいので別山を登り始めたが、どんどん明るくなる。あわててザラザラの斜面を駆け上り、息も絶え絶えに山頂に着いた時には、ちょうど日が出てしまったところだった。


110925朝日に染まる立山

立山の山々も赤く染まっている。


110925内蔵助山荘 朝の内蔵助山荘。ちょっと主稜線から外れているが、非常にロケーションのいいところに建っている。

110925内蔵助山荘の流しの氷小屋の水場には分厚い氷が張っている。

110925内蔵助カールの雪渓

内蔵助山荘から、崩れやすいザラザラの斜面を内蔵助カールに下りる。この雪渓は化石氷体と言って氷河の名残だ。まるでアンデスの砂漠の塩湖のような、日本離れした風景。


110925内蔵助カールのモレーン

内蔵助カールのモレーンの上を歩く。ここから内蔵助平まで長い下りが始まる。とりあえず、風も弱く、天気もよく、ルンルンと歩いてゆく。


110925内蔵助平への道のロープ ルンルン気分はどこかへ行ってしまった。稜線から内蔵助谷までおよそ1000mを一気に下る、とても急な下りだ。刈り払いは入っているものの、ところどころ藪っぽく、木の根に足を取られ、岩は苔でツルツルすべり、随所にロープが張ってある。このロープのすぐ左側はすっぱり切れ落ちた崖だ。滑って転んだら大変なことになる。

110925内蔵助平への道樹林帯 下れば下るほど藪っぽくなる。おまけにやたら蒸し暑い。今朝の寒さがうそのようだ。

110925内蔵助平への道クロマメノ木

藪は悪いことばかりではない。道の両側にはクロマメノ木(ブルーベリー)がわんさか生えている。ちょいちょいつまみながら、大きいのが甘いだのなんだの、クロマメノ木評論家になって下りる。


110925内蔵助平が見える

藪が途切れ眼下に内蔵助平が一望できる。内蔵助平ってどんなところだろう?

地図で見ると、3000m級の山々に挟まれた急峻な谷のそこに、そこだけ不釣合いなまっ平らな平野が広がっている。荒地の地図記号が書かれている。おそらく内蔵助谷と真砂沢の出合が、内蔵助カールからの厖大な土砂によって埋め尽くされてできたのだろう。不思議な場所だ。


110925内蔵助平への道雪渓

だいぶ下りてきたが、まだこんなに大きな雪渓があった。さすが世界有数の豪雪地帯。真ん中のあたりはかなり崩壊しているので、上流へ大回りして雪渓を横断する。横断しきってちょっと上がったところに、畳のような平らな岩があり、休憩にもってこい。


次回に続く)



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2011年10月08日

内蔵助平から旧日電歩道へ〜剱岳(5)

9/25 剣御前小舎〜内蔵助山荘〜内蔵助平〜黒部ダム〜扇沢

前回の続き)

110925内蔵助平への道お花畑

内蔵助平は見えてもなかなか着かない。うんざりするような下りが続く。あち〜、まだか〜、うんざりだ〜、とブツブツ言いながら下っていく。と、突然、沢沿いに大きなお花畑が現われた。神様が私を慰めてくれたのか?シシウドからアザミまで色とりどりの花が、まるで夏のお花畑のようにわんさか咲いていた。このルートの見どころの一つだと思う。


110925内蔵助平に到着 ヌルヌルする道を下り、いくつも小さな沢を横切り、やっと内蔵助平到着。内蔵助山荘から3時間半。右は真砂沢、左は内蔵助谷出合を経て目指す黒部ダム。ここから少しは道が良くなるかと期待したが、ご覧のとおり道標が朽ちかけているような道だ。

110925内蔵助平は藪の原

内蔵助平...それは緑の地獄。谷底の平原は低潅木の森、そして背丈を越えるネマガリタケが壁のように密生する視界ゼロの藪だった。道はしっかりつけられているが、足元は沢だったり泥地だったりする。この藪に突入すれば10mも行かないうちに方向感覚をなくすだろう。地図とコンパスを使って進んだとしても、100m進むのに2、30分くらいかかりそうだ。よくもまあ、こんなところに道を作ったな。


110925内蔵助谷に沿った道 内蔵助谷に沿って、小刻みにアップダウンを繰り返し、ときにはロープを伝い内蔵助谷出合へ下ってゆく。雨のときには歩きたくない道だ。

110925丸山の岩壁

内蔵助谷の左岸は、南東壁が黒部の魔神と呼ばれる大タテガビン、右岸が黒部の巨人と呼ばれる丸山東壁、両岸が圧倒たる岩壁となっている。岩壁を見上げ、威圧感を受けながら歩いてゆく。


110925内蔵助谷黒部川合流点

内蔵助谷の小さな枝沢を渡ると、黒部川本流が見えてくる。黒部川の岩壁の威圧感も相当なものだ。すぐに黒部川と内蔵助谷の合流点、内蔵助谷出合となり、道は旧日電歩道と合流する。


110925旧日電歩道の滝

旧日電歩道は良く整備された快適な道だ。この道は、もともと日本電力株式会社が昭和4年に電源調査のために小黒部谷〜平ノ小屋間に開削したものだ。今では関西電力が登山道として毎年整備している。深く切れ落ちた急峻な地形で、土砂崩れや雪崩が多いため、整備のために多大なお金と労力をかけているとのことだ。


110925旧日電歩道は黒部川に沿って延びる

う〜ん、絶景かな絶景かな。


110925旧日電歩道の大文字草のかたまり

なんだ?黒部は大文字草のスケールも違う。ひっそり咲く可憐な花というイメージがあったが、花束のようになって咲いている。でも良く見ると長い花弁が1枚しかないから別の花かな?


110925黒部ダム

ついに今回の終点、黒部ダムが見えてきた。観光放水の真っ最中で、巨大なコンクリートの壁から、爆発しているかのような勢いで水が出ている。これが見たかったのさ。


110925トロリーバス乗り場に出た 黒部川にかかる意外としっかりした橋を渡り、最後の難所、黒部川右岸につけられた、黒部ダム駅までの標高差約150mの九十九折りの道を登る。登りきった所を矢印に導かれてトンネルに入ると、トロリーバス乗り場だった。まだ切符買ってないぞ。

110925牛肉弁当 連休最終日にもかかわらず、心配していたほどアルペンルートや扇沢からのバスは混んでいなかった。途中、大町温泉で汗を流した後、松本に出て帰京の途につく。あずさの中で牛肉弁当とビールで乾杯。

(剱岳〜完)



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